嫁に出す気持ち
長男は宿題が進まない男だ。
低学年のころはかなり酷く、漢字を一ページ書くだけで一時間もかかっていたのだ。
ぼんやりして書き進まないのが原因であった。
作文はもっと酷く、まず書くことが思い浮かばないらしいのだ。
だから、まず何を書くかを決め、それについていつ誰が何をしてどうしたのかを書く。
それからそれについての感想や思ったことを付け加えるという感じで作文の下書きをしてから作文を書かせるという・・・2日がかりの作業が必要であった。
ある学年の年に、毎週末作文を書かせると言う先生に当たってしまった。
親子して、もう本当に血反吐を吐く思いで作文にとりかかっていた。
何しろ声かけしても何をしても、文章が長男の頭から出てこないのだから進まないのは当然なのだ。
もう本当に地獄のような一年であった。
お互いにイライラして、ガミガミ言い合って大変なのだった。
しかし次の年、作文の宿題が出されても小一時間ほどで作文がかけるようになっていたのだ。
不思議な物で、何とか形を取り繕った文章がなんとなく書けるようになっていた。
これはあの作文地獄があったからだと思う。
今思うとありがたい先生であった。
長男も今は漢字も文字数が増えているにもかかわらず、20分ほどで書けるようになった。
彼は確実に進化している。
そんな長男が宿題前に友達と遊びたいと言い出す。
普段ならだめだが、私立の受験終わりの友達と遊びたいというのだ。
長男は勉強や受験に興味がないので、公立にいく予定だ。
だから四月からはその子とは学校が分かれてしまうのだ。
まぁいいか、とOKを出すと、長男ではなくその友達に深く頭を下げられ、「ありがとうございます」と言われたのだった。
うん、微妙な気持ち。なんだか長男を嫁に出すような気持ちになってしまった。
ほんの一瞬だったけどね・・・